研究概要 |
今年度は、出力の高いTEA炭酸ガスレーザーを用い、単色赤外レーザーマイクロ秒パルス照射による有機化合物の選択的反応誘起について検討した。圧力5.0torrの塩化アリル誘導体の3-クロロ-1-ブテンを封入した、自作赤外用気体セルに対し、セル内に焦点を結ぶよう、焦点距離750mmのアルミ蒸着凹面鏡を用いて集光したパルスレーザー光(波数1070cm^<-1>、1パルス当たり0.8J、0.65Hzで照射)を23分間照射した結果、塩化水素の脱離が選択的に起こり、1,3-ブタジエンが高選択的に生成することが明らかとなった。一方、焦点をセルの手前100mmの地点に結ぶように集光して照射を行った場合には、反応は全く進行しないことがわかった。 また、圧力5.0torrの2-ブロモプロパンについても同じ条件で実験を試みた結果、(パルスレーザー光波数1036cm^<-1>、1パルス当たり1.0J、0.65Hzで22分間照射)定量的にプロピレンに変換できることが明らかとなった。 さらに、3-クロロ-1-ブテンと2-ブロモプロパンの等量混合物(各分圧1.94torr)に、2-ブロモプロパンのみが吸収を示す波長のパルスレーザー光(波数1054cm^<-1>、1パルス当たり0.8J、0.65Hzで照射)を30分間照射したところ、前者を反応させずに後者のみをプロピレンに誘導できることがわかった。一方、同じ混合物に、3-クロロ-1-ブテンのみが吸収を示す波長のパルスレーザー光(波数930cm^<-1>、1パルス当たり1.0J、0.65Hzで照射)を30分間照射したところ、今度は1,3-ブタジエンが生成することがわかった。 今回の結果は、予想以上の高圧条件下でも、混合物中の特定の分子だけを選択的に活性化できることを示唆する結果であり、次年度に計画する実用的合成への応用に期待を抱かせるものとなった。
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