研究概要 |
前年度には成功できなかった1,5-ヘキサジエン-3-オールの中赤外パルスレーザー誘起オキシ-コープ転位を、TEA-炭酸ガスレーザーによって発生させた930cm^<-1>のパルスレーザー光の照射により効率よく進行させることに成功した。高選択的に5-ヘキセナールが生成することを、反応混合物の気相赤外分光分析によって確認した。反応の誘起には、1パルス当たり1.5Jの光を集光し、反応セル内で焦点を結ばせることが必須であることが明らかとなった。 リモネン、ジシクロペンタジエン、およびフランに、アクリロニトリルまたはメチルビニルケトンの共存下で赤外レーザー光を照射し、ディールス・アルダー反応を誘起することを種々検討したが、今回用いたレーザー光ではエネルギー不足のため、熱ジエン分子を有効に発生させることが困難であることが判明した。この反応については、炭酸ガスレーザーの波長域も反応の選択的誘起には不向きであることが示唆されたので、今後、さらに研究を発展させるにあたり、自由電子レーザー機器によって発生される、短波長域のより強力な赤外パルスレーザー光によって実現する方向で、現在東京理科大学自由電子レーザー研究センター機器の利用を目指し、調整を進めている。 凝縮液体試料を原料とする反応制御に本技術を拡張する目的で、今回新規に蒸留型反応セルを試作した。減圧蒸留の蒸気流路に赤外パルスレーザー光を照射する設計で、実際にブロモシクロヘキサンおよびカルベオールメチルエーテルならびにメンチルメチルエーテルの脱離反応への応用を検討した。その結果、蒸留受器側を液体窒素により冷却するだけで蒸留が円滑に進行し、蒸留釜と受器を交互に入れ替える方式で反復蒸留しながらレーザー光照射実験が行えることが実証できた。 ただし、反応転化率を短時間で上げるためには、レーザー光照射と蒸留速度の条件設定に改良を必要とすることがわかった。
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