研究概要 |
本年度は,55個の金原子で構成されるAu55ナノクラスターを合成し,様々な有機配位子を用いたAu55ナノクラスター凝集構造制御およびクラスター間の空隙を利用した分子サイズ選別について検討した。 トリフェニルフォスフィン配位子により安定化したAu55ナノクラスターを合成し,カラムおよび再結晶により精製を行った。精製後のAu55ナノクラスターの粒径を透過電子顕微鏡(TEM)により評価したところ,直径1.4nmと理論的な直径に合致し,クラスターの合成を確認した。トリフェニルフォスフィンが配位したAu55ナノクラスターの自己集合構造体は,論文で報告されているとおりナノクラスターがヘキサゴナルに配列し,クラスター間隔が2nmであった。一方,テトラピリジルポルフィリンにより連結したAu55ナノクラスター集合体はキュービック構造でありクラスター間距離は2.8nmとなった。以上の結果は,クラスターを連結する有機配位子の構造を変えることでクラスター凝集体のメソ構造を制御可能であることを示す。 また,ペンタンジチオールで連結したAu55ナノクラスター集合体を金電極上に形成し,ベンゾキノン,ドーパミン,ナフトキノンの酸化・還元応答を観測したところ,分子サイズが最も小さいベンゾキノンのみ特異的な電流応答の増大が観測された。TEM測定からペンタンジチオールで連結したAu55ナノクラスターでは,クラスター間隔がペンタンジチオールの分子サイズ程度であることが示され,Au55ナノクラスター集合体を用いることで分子サイズ選別および電気化学検出が可能となることが示唆された。
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