金や銀は自由電子が紫外〜近赤外域の光電場と相互作用を起こし、光電場がプラズモン電場へ変換される。平面金薄膜に比べて驚異的に強い表面プラズモン電場を発生する金ナノロッドを活用した新規SPRセンサーを創製することを最終目標に、以下の事項について検討を行った。 (1)金ナノロッドの固定化 セシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)で保護された金ナノロッドを静電相互作用によりガラス基板に固定する方法を確立した。先ず、ガラス基板に親水化処理を施した。次いでこの基板をカチオン性のポリアリルアミン(PAH)水溶液に浸漬し、PAHを固着させた。次いでアニオン性のポリスチレンスルホン酸(PSS)に浸漬し、(PAH)(PSS)層を形成した。この基板をCTAB修飾金ナノロッド水溶液に浸漬すると、金ナノロッドの吸着が認められた。さらにソフトなポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)に浸漬し、金ナノロッドを安定に固定する技術を確立した。 (2)透過型表面プラズモン共鳴(SPR)センシング 作製した金ナノロッド修飾基板を溶媒に浸し、通常の分光光度計でプラズモン吸収スペクトルを測定した。屈折率の異なる溶媒中で測定すると、短軸方向のプラズモンバンドのシフトは認められないものの、長軸方向のプラズモンバンドが大きくシフトし、溶媒の屈折率との相関関係が認められた。この結果から、透過方式のSPRセンシングが原理的に可能であることが実証できた。 (3)表面修飾の検討 金ナノロッドの表面を保護しているCTABを対イオン型のホスファチジルコリンで一部置換することに成功した。一部置換したものは、単独コロイド溶液として安定に分散することが分かった。これにより、交互吸着密度を向上させるための化学修飾が達成された。
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