研究概要 |
本年度は、「光学活性メタロセンポリマー」を合成する際のモノマーとなる面不斉を有する架橋メタロセン類の合成に関する検討を行った。メタロセンとしては、中心金属に鉄を有するフェロセンを選んだ。フェロセン類は、一般に水、空気に対して安定であり容易に取り扱うことができることから、これらから合成されるポリマーにも安定性が期待できる。 1,1',3,3'-テトラシクロヘキシルフェロセンを、ジクロロメタン中で塩化アルミニウム存在下で塩化アセチルで処理すると、2つのシクロペンタジエニル基がアセチル化される。このジアセチルフェロセンをLDAで処理しエノラートとし、塩化銅存在下で酸化的に分子内カップリングすると、1,4位にカルボニル基を有する4炭素で架橋されたフェロセンが得られる。このフェロセンは、4つのシクロヘキシル基の置換様式により、メソ体、およびラセミ体の2つのジアステレオマーとして存在するが、これらはカラムクロマトグラフィにより容易に分離可能である。こうして得られたラセミ体の架橋フェロセンを、それぞれのエナンチオマーに光学分割する方法を種々検討した。光学活性アミンを用いて、ジアステレオメリックなイミドに誘導化する方法は、基質となるフェロセン類の立体的な要因から有効な反応条件を見つけることができなかった。そこで、この架橋フェロセンのジケトン部位を不斉水素化することによる光学分割を、現在検討中である。この手法では、ラセミ体のフェロセンを速度論的分割することになる。
|