ラジカル反応を用いた二酸化炭素の固定化は、これまでに有効な反応がほとんど報告されていない未開拓な方法論であり、炭素の最終酸化状態であり化学的に極めて安定な二酸化炭素を化学反応により効率よく固定化し炭素資源として利用する非常に興味深い研究課題である。この課題に対して、平成15年度より<1>二酸化炭素は求核剤と平衡的に付加体を作りやすいという特徴を活用したオキシカルボニルラジカル発生法の開発、<2>不安定反応中間体であるカルボキシラジカルを選択的に捕捉可能とする適切な分子設計を行うことで、ラジカルが二酸化炭素へ付加する際の平衡を制御する方法論の開発、の2つのアプローチを行ってきた。<1>のオキシカルボニルラジカル発生法の開発に関しては、付加体の選択および形成条件を確立することができたが、付加体の炭素-硫黄結合をホモリティックに開裂する条件を見出すには到らなかった。<2>の平衡制御方法論に関しては、発生させたラジカルが二酸化炭素に付加するよりも速く溶媒から脱水素する点が問題であった。この問題点を解決するため平成17年度は、メソポーラス化合物の細孔内を反応場として利用することを重点的に検討した。シリカ型メソ多孔体と有機-シリカハイブリッド型メソ多孔体の2種類について、細孔内への基質の取り込み条件について詳細に検討した結果、いずれも細孔内がいわば"固定化された溶媒"とみなせることが明らかとなった。各種有機溶媒のみならず水溶媒からも各種基質がメソ細孔中に移動し、平衡状態を形成することを見出した。基質の一般性も大きく、極性または非極性有機分子だけでなくイオン性の基質も溶媒-メソ細孔間で分配された。高速遠心分離でろ過することにより細孔内に基質を保持したまま溶液と分離する手法を確立し、無溶媒条件での反応に道筋をたてた。細孔内への触媒活性点の構築を現在検討している。
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