研究概要 |
二酸化炭素とアルコールを高温高圧のもとで触媒の存在下に反応させると、炭酸エステルが合成できることが知られている。しかし、本反応は水が存在すると、分解反応がおこり原料の炭酸ガスとアルコールに分解されてしまう。 我々は脱水剤として不飽和炭化水素を用いる手法を考案した。炭酸ガスとアルコールの反応によって生成する炭酸ハーフエステルは一種のカルボン酸であるので、不飽和炭化水素への付加反応により非対称型の炭酸エステルが原子効率100%で合成できるものと考えて研究を行った。まず、金属触媒の存在下にエタノールと二酸化炭素およびプロピレンを反応させた。反応は超臨界条件(30MPa,150℃まで)まで各種触媒を用いて反応を行ったところ、ヘテロポリ酸触媒(H_5PMo_<12>O_<40>)を用いた場合に、対応する炭酸エステルの生成は極めて痕跡量(TON<1)であり、主生成物としてエチルイソプロピルエーテル(TON 50)が得られた。これは二酸化炭素がアルコールと反応せずに、アルコールが直接プロピレンに付加をする反応が優先したことを意味する。 二酸化炭素とアルケン類の反応が進行しなかったので、次にアセチレンとアルコール、二酸化炭素の反応を検討した。塩化ルテニウムを触媒として用い、フェニルアセチレンと各種アルコールを二酸化炭素加圧下(3MPa)、150℃で反応を行った。数時間でフェニルアセチレンの転化率は100%に達したものの、目的とする炭酸エステルは全く生成していないことが判明した。理由としてフェニルアセチレンは金属触媒存在下に重合、オリゴマー化することが知られている。本反応からも、フェニルアセチレンの2量体(エンイン体)、3量体(トリフェニルベンゼン)の他、高分子量のものが多数生成した。二酸化炭素の反応よりも、フェニルアセチレンの多量化反応が容易に進行するために目的とする反応が進行しなかったものと考えられる。
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