研究概要 |
分子レベル平滑面に対し,ナノ構造構築を行う際,どうして炭素-炭素結合生成に関わる有機反応を利用するものがないのか非常に不思議であった。有機薄膜を形成し,その上で分子レベルの反応を制御しながら行うことができれば,決して不可能なことではないと考えられる。すなわち,STM・SNOMは,電流・光を微細部に制御して送ることができるので,それを利用した反応を行うことが考えられる。しかし,もっと簡単な外部からの推進力として圧力を考えればどうであろうか。測定の容易なAFMは,物理的な原子間力を利用しており,カンチレバーの先にはかなりの圧力がかかるはずである。少々過酷な測定条件ではあるがコンタクトモードの32nNの一定力をかけた場合,ばね定数と針先の大きさを考えると,30MPa程度の圧力がレバーの針先にかかることになる。これは有機反応に十分利用できる圧力である。この圧力を利用した有機反応は,様々な可能性があるが,今回利用しようとしているのはジエン-アルケン間のDiels-Alder反応である。つまり,アルケン1分子膜に対し,ジエンをカンチレバーに浸したのち,測定条件でスキャンする。Diels-Alder反応は,基質により反応の進行は様々であるが,逆に言えば,そのカンチレバー先にかかる圧力に適切な反応性を持つジエンを基質として選ぶことができる。アルケンは,1分子膜として平坦面を形成することができる。この組み合わせを検討することにより,自由にナノスケールの強固な構造を形成することができる。有機分子によるナノ構造の構築は,分子に自由に様々な原子を組み込むことができる。
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