研究課題
本年度は、両親媒性置換基を持つジアリールエテンのフォトクロミズムについて検討した。両親媒性の置換基としてはポリエチレングリコール鎖を選んだ。親水性の測鎖と疎水性のコアからなるこのような分子は水などの極性溶媒中で会合状態を取り、特異な挙動が期待される。合成した化合物は温度を上げると45℃付近で白くにごる挙動が認められた、転移温度は開環体が47度であったのに対して、閉環体は41度であった。フォトクロミズムに伴う異性化によって閉環体となることで、転移温度が6℃小さくなることが明らかとなった。これは、閉環体の方が疎水性相互作用が強く、転移温度が低くなったことを意味している。また、この会合状態について、温度可変NMR、動的光散乱、原子間力顕微鏡を用いて詳細な検討を行った。その結果、100nm程度の会合体が生成していることが明らかとなった。温度を上げることによる白濁は会合が緩むことによって会合体のサイズが大きくなっていることが原因であると示唆された。また、キラル源となるメチル基を導入した分子についてCDスペクトルを測定した。酢酸エチル中では、フォトクロミズムに伴うCDシグナルは観測されなかったが、水中では、開環体では観測されなかったCDシグナルが閉環体において可逆に観測されることが明らかとなった。閉環体は2種のジアステレオマーを生成するが、ジアステレオ選択性は観測されなかったことから、観測されたCDシグナルは、閉環体が作るキラルなナノ構造体に由来すると考えられる。溶液中でキラル情報を光で可逆に変換することができた。
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