(1)テトラフェニルメタン誘導体を用いた金属ナノ粒子の調製を行った。テトラフェニルメタンの4箇所のパラ位のうち3箇所にチオエーテルオリゴマーを、1箇所にポルフィリンを結合した色素・ナノ粒子保護部位結合分子を開発し、ポルフィリン・ナノ粒子の複合系の合成を試みた。金ナノ粒子の場合、粒径はTEM分析から1.5nm程度であり、これはポルフィリンを含まない系とほぼ同じである。この分子では、剛直なテトラフェニルメタン骨格をはさんでポルフィリンとチオエーテル保護部位が互いに反対側に位置するため、ナノ粒子の保護に関してポルフィリンの有無に関わらず類似の挙動を示すものと考えられる。同様の方法で、白金のナノ粒子も合成した。これらの複合系について、光化学挙動について調べた。ポルフィリンの蛍光発光は大きな消光は受けておらず、ナノ粒子と色素の相互作用は比較的弱いことがわかった。なお、白金粒子は光・酸素が存在する条件で不安定であり、ポルフィリンが容易に分解する。ナノ粒子の触媒作用によって光酸化が促進されていることが示唆される。 (2)前年度に合成した内部にカルボキシル基を有するデンドリマーについて、発展的研究を行った。この分子は、無機ナノ粒子との複合体形成についてはよい結果を与えなかったが、別の方法で光合成物質変換に活用できる可能性があり、萌芽研究としての趣旨から研究を進めることが適当と判断したものである。このデンドリマーの中心(核部位)にポルフィリンを結合し、エステル基を官能基変換して酸化還元活性基(フェロセンおよびキノン)を結合した分子をそれぞれ合成した。ポルフィリン/フェロセン結合分子では、ポルフィリンの光励起によってフェロセンからの電子移動が起こる。電子移動の効率はポルフィリンの蛍光消光によって見積もることができ、明確な世代依存性が観測された。また、キノンを含む系では、電子移動の後続反応としてキノンのヒドロキノンへの光還元を行うことができた。
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