本研究の目的は、超分子ヒドロゲルを用いた分子レベルでデザインされた水溶液類似のナノ空間の構築、そこへ封じ込められた酵素・蛋白質の構造と機能の静的及び動的な解析を通して、この超分子ナノ空間の特徴及び酵素・蛋白質への作用を解明することである。また、これらの知見をもとに、蛋白質固定化された超分子ナノヒドロゲルがセミウエット型の蛋白質チップとして機能化されることを実証することを目指した。本年度は、既に我々が開発した何種類かの糖アミノ酸型の超分子ヒドロゲルを用いて、構造・機能の明らかなモデル蛋白質(ミオグロビンやトリプシン)のゲル内への固定化によって得られた知見を基に、超分子ヒドロゲルを基板としたペプチド・タンパク質チップの構築を検討した。具体的にはトリプシンのような加水分解酵素においては蛍光変化によって酵素活性をモニタリングできる反応基質をデザインして超分子ゲル中に共存させ、生成物解析からナノヒドロゲル空間での見かけの酵素反応速度を見積もり、ヒドロゲル中では拡散速度の低下によって反応は遅くなるものの、ゲルのダンウサイジングを行うと見かけの速度の低下は殆どおこらないことを見いだした。さらにこれを展開して、種々の加水分解酵素に利用できることを実証し、ダウンサイジングによるチップ化に成功した。この超分子ヒドロゲルチップはハイスループットな酵素アッセイに応用可能であることを明らかにすることが出来た。
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