研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼはヘム分子を代謝分解する酵素として、近年特に注目されている。この酵素はヘムを基質として取り込み、ヘム上で発生する活性種(Fe-OOH)の形成を支援し、ヘムからビリベルディンへの酸化分解を促すことが明らかとなってきた。本研究では、非分解性の人工ヘムを合成し、ヘムオキシゲナーゼを単なるヘム分解酵素としてではなく、様々な基質に対する有用な酸化酵素として変換することを目的としている。 本年度は、ヘムオキシゲナーゼの基質としてヘムの構造異性体であるポリフィセン鉄錯体をヘムオキシゲナーゼ挿入して、リガンド結合の評価を行った。鉄ポルフィセンとしては、2,7-diethyl-3,6,12,17-tetramethyl-13,14-dicarboxyehtylporphycene iron complexと2,7-diehyl-3,6,13,14-tetramethyl-12,17-dicarboxyethylporphycene iron complexを合成し、まずヘムオキシゲナーゼとの相互作用を評価した。いずれもポルフィセン鉄錯体のメト体はヘムオキシゲナーゼと複合体を形成するものの、前者は6配位(ヘミクローム型)、後者は5配位錯体を形成することが明らかとなった。酸素錯体の安定性は、天然のヘムに比べ格段に向上した。また酸素と一酸化炭素の選択性は、ミオグロビンと異なり酸素が特異的に結合することが明らかとなった。またポルフィセン骨格のプロピオン酸の位置と酸素結合については、13,14位にプロピオン酸が結合している方がより酸素分子が安定に結合することが明らかとなった(特に解離速度定数は、13,14位にプロピオン酸が結合している方が小さい)。次年度は、このポルフィセン鉄錯体を有するヘムオキシゲナーゼを用いて、酸化触媒活性を評価する予定である。
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