研究概要 |
ZnOへのMg-N結合のドープによるp型ZnOの合成を検討した。具体的には、2つのカソードすなわちZnOターゲットとMg_3N_2ターゲットを有するスパッタリング装置により薄膜作成を行った。2つのターゲットは独立のRF電源により放電させ、ZnOへのMg_3N_2のドープ量はターゲットに加えるRF出力によって制御した。Mg_3N_2のRF出力80W、ZnOのRF出力75W,酸素分圧2x10^<-5>Torrの条件で作成したZnO薄膜では、MgのZnに対する濃度が10%以下のときにp型が得られた。Mg_3N_2を添加したZnO薄膜のXPS測定から、試料の組成はZn : O : Mg : N =37.4%:47.3%:3.8%:11.5%と見積もれた。かなりの窒素が試料中に存在し、その含有されている窒素の中で70%は窒化物に帰属される。従って、ZnOの中に高濃度の金属-窒素結合が導入されていることが明らかになった。薄膜のX線回折測定から、窒素を単独ドープした場合には格子が大きくなり、Mg-N結合を添加した場合は格子の膨張は幾分酸くなることが判明した。こうしたX線回折実験から、添加したMg-N結合は単純にZnO格子に混合しているのではなく、格子置換していることが明らかになった。 電流注入型の発光ダイオードを作成するためn型のZnO薄膜をスパッタリング法により作成した。ターゲットとしてAlをドープしたZnO紛体を用いAr雰囲気で作成した。N-ZnO薄膜は面抵抗が数kオーム程度である。このn型ZnO薄膜の上にZnO75W, MgN130W,3xlO^<-2>Torrの条件下でp型ZnO薄膜を堆積させた。さらに電極としてAuをDCスパッタで堆積させ、n-ZnO/p-ZnO/Auからなる素子を作成した。Au電極を着けたところ下地のn-ZnOと電気的に短絡したしまった。原子間力顕微鏡でスパッタZnO薄膜を観察したところ多数の粒子、穴が存在し、これによりn-ZnOとAuとの短絡が起こったものと考えられる。そこでPt電極をp-ZnOと接触させて電流-電圧特性を測定した。逆バイアスでは全く漏れ電流は観測されず良好なpn接合特性を示した。順方向で電流注入を行ったが発光を観測することはできなかった。これはn-ZnO薄膜をスッパタで作成したため多数の欠陥が生じたためである。高品質のZnO薄膜の作成により紫外線発光デバイスを実現することが可能となった。
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