(1)p型ZnO薄膜の作成 ZnOとMg3N2を同時にスパッタリングすることにより、Mg-N結合を添加したZnO薄膜を作成した。高い真空状態ではZnOが窒化されp型ZnOは得られなかった。酸素を導入するとZnOの窒素化は抑制されたが、MgNの酸化が起こった。MgNの選択的な窒化条件を検討した結果、スパッタを行う真空を悪くすることによりZNOの酸化とMgNの窒素化を両立させることができた。 ZnOの結晶性と正孔生成との関係を調べた結果、マイカ基板上でZnOを堆積させると極めて結晶性の高いZnOが成長することが判明した。こうした実験結果から、比較的悪い真空状態で、マイカ基板上にMg-N結合を添加したZnOを堆積させたところ、p型ZnOが得られた。しかし、空気中では数時間程度でp型が消失し、大気中の水分が原因であることが判明した。 添加されたMg-N結合の活性化を進めるために、高温アニール、電子線アニールなどを行ったが、良好な結果は得られなかった。この原因として、高温ではN原子の溶解度が低いためと考えられる。 (2)平坦な表面を持つ単結晶状ZnO薄膜の作成 良質なZnO薄膜を作成するため、イットリウム安定化ジルコニア<YSZ>、窒化したサファイア基板、F置換した合成マイカ基板上に、酢酸亜鉛を前駆体として、MOCVD法により高品質のZnO薄膜を作成した。YSZ基板上では700-800℃の温度でも良質なZnO薄膜は成長しなかった。また、サファイア基板でも高い基板温度ではZn-Al-O系のスピネル化合物が生成し、エピタキシャル成長による単結晶状薄膜の成長には至らなかった。これに対して、F置換した合成マイカ基板の上では、最適な条件化では600-700℃の温度範囲で単結晶状ZnO薄膜が得られた。このMOCVD法を用いてMg-N結合ドーピングを行ったところ、高抵抗ながらp型ZnOが得られた。
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