無機化合物の結晶構造において、「クラスターユニットの相互連結によるマクロクラスター結晶化学」を構築する目的で、BS_4四面体の連結からなる巨大四面体クラスター形成とその結合様式について検討した。ホウ素とイオウの二成分系の高圧合成により、四面体配位のホウ素を基本単位とするマクロテトラヘドロン化合物の形成を確認し、圧力、温度をパラメーターとした生成ダイヤグラムを作成した。B_2S_3組成では、5GPa程度の圧力用域において、BS_4四面体が4段、5段に積み重なった巨大四面体クラスターが形成され、このクラスター同士が閃亜鉛鉱型構造に連結した結晶構造を形成することを確認した。次に、一価、二価金属を含む三元系ホウ硫化物の高圧合成を検討し、Ca-B-S系において、新規化合物CaB_2S_4高圧相を発見した。CaB_2S_4高圧相には2つの多形が存在し、比較的低圧側(CaB_2S_4-I)ではBS_4四面体の三段連結からなる巨大四面体が形成されることを見出した。Ca原子は巨大四面体配列の空隙位置に存在しており、結晶構造内の空洞を移動経路とするイオン伝導体としての応用可能性が見出された。一方、さらに高圧側ではCaB_2S_4-IIが生成し、結晶構造解析の結果、CaB_2S_4-I相における巨大四面体が崩壊し、孤立したBS_4四面体を結晶構造内に含むことが判明した。以上の結果から、常圧下で平面3配位構造となるホウ硫化物系において、高圧力下ではBS_4四面体からなるマクロクラスターが形成されることを知見したが、さらに圧力を増大させるとクラスターが崩壊することが明らかとなった。
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