シュウ酸エタノール沈殿法によるシュウ酸マグネシウムの製膜では、ソフトソニケーション(以下、SS)処理によるガラス基板上への効果的な製膜が可能であった。しかしながら得られたシュウ酸マグネシウムは結晶水およびシュウ酸根を含み、熱処理によって大きな体積減少を伴うため、得られた膜の熱処理によるセラミック化は困難であった。出発溶液のエイジング効果が顕著に現れたのはこれまでシュウ酸エタノール法のみであったが、Stober法による単分散シリカ球状粒子についても類似の効果が認められたので、これについてSS効果を検討したところ、以下の知見が得られた。 1.通所のエイジング(7d)では沈殿生成期間(IP)が倍増し、最終球径が120%程度に向上したのに対し、SS処理によりそれぞれ3倍増、130%となった。このときの粒径の増大を核生成頻度に換算すると、概ね0.5であり、SSエイジングにより核生成が半分にまで低下することを明らかにした。 2.D90/D10値より評価した単分散性は、0.92から0.96にまで向上し、コロイド結晶としての応用が期待された。 3.得られた高単分散性球状粒子の単純な自然沈降による製膜によって人工オパールの作製が可能であった。 SS効果発現のメカニズムについては、(1)〜40kHzの高振動数、(2)理論式より導かれるナノレベルの振動振幅、が効いているものと推察されるが、確固たる裏付けは得られていない。この問題と併せて、溶液構造の変化を直接検証できるような手法・理論の確立が今後の重要な課題である。また、SSエイジングについては温度も重要なファクタと考えられるが、今後検討の予定である。
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