本研究は、導電性ポリマー材料にアルミニウムやインジウムなどの金属を蒸着すると、自発的にハイブリッド化反応が生じ、導電性ポリマーと金属酸化物(あるいは水酸化物)の新規ハイブリッド材料が形成されることを主題としている。このハイブリッド化反応は、導電性ポリマーとしてポリピロールを用いた研究に端を発しているが、これまで他の導電性ポリマーでもこのハイブリッド化反応が生じるか否かの確認が課題とされてきた。この確認は、本ハイブリッド化反応の汎用性を判断する上での重要な検討項目である。そこで本年度は、導電性ポリマーとしてポリカルバゾールおよびポリ(3-メチルチオフェン)を用いた検討を行った。前者は電子写真分野でホール輸送剤として知られる材料であり、後者は導電性ポリマー導電性ポリマーの中で最も耐候性に優れたポリマーとして知られている。 ポリカルバゾール膜を電解重合法により基板上に形成すると、鮮明な緑色の膜が得られるが、この膜にアルミニウムおよびインジウムを蒸着したところ、蒸着部が緑色からわずかに黄色がかった白色に変化した。そして様々の機構論的な検討実験を行ったところ、その色変化は導電性ポリマーが脱ドーピング反応を起こした結果であることが判明した。この結果は、このハイブリッド材料の工学的応用を考える上で極めて重要である。すなわち、金属と接した部分で白色化が生じるので、例えば、金属ナノ粒子を位置選択的にポリカルバゾール膜上に置くことでナノ画像の形成が可能となる。また白色部分は、脱ドープ反応が生じるので、絶縁化する。従って、今後導電性ポリマーにやはり位置選択的に金属(粒子)を置くことにより、導電性膜の中に絶縁性のパターン形成(回路形成)を行う予定である。なお、ポリ(3-メチルチオフェン)膜を用いた場合にもハイブリッド化反応が確認され、本手法の汎用性が確認された。
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