研究概要 |
1973年,Du Pont社から市場に出されたケブラー(Kevlar)繊維は,ポリ-p-フェニレンフタルアミド(PPTA)で,ナイロンや同重量の鋼線の数倍の引張りに強く,防弾チュッキにも用いちれているリオトロピック液晶である。本研究では,トロポノイドを中心コアにするケブラー型新規トロポノイドポリマー液晶やポリマー液晶を目指した新規モノマー液晶などを合成することが目的である。 極性構造の寄与の大きなトロポン環にアルコキシ鎖などの非極性基を導入すると,ミクロ相分離を起すことと,トロポン環の双極子モーメントを打ち消すように分子がhead-to-tail型で配列するためにスメクチック相を優先的に発現する。このことに着目していくつかのトロポノイド液晶化合物を合成し,対応するベンゼノイドより液晶性に優れていることを見い出している。特に,トロポノイドは単環でも液晶性を示したが,対応するベンゼノイドは非液晶で,顕著な相違点を示した。このようなモノマー液晶で得た知見を基に,トロポノイドポリマー液晶の合成へ展開する。 先ず,トロポノイドがポリマー液晶のコアになり得るかを調べた。5-ヒドロキシトロポロンと塩化アルカンジオイルから合成した単環性トロポノイドポリマーはネマチック相を発現したが,対応するベンゼノイドはポリマーでも非液晶であった。分子量分布の広いトロポノイドオリゴマーを分取して,分子量分布の狭いオリゴマーにすると,液晶性が消失した。低分子量オリゴマーの存在が,液晶性の誘起に繋がったと解釈した。次に,ツイン型2環性オリゴマーの場合は非液晶であったが,分子量分布をある程度揃えると,液晶性が発現した。現在,3環性オリゴマーの合成や5-アミノトロポロンや2,5-ジアミノトロポンをコアにしたモノマー及びポリマー液晶を合成している。
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