研究概要 |
(1)放射光の高エネルギーX線が、材料への侵入深さが大きいことを利用して、材料表面下の残留応力分布を非破壊的に測定する手法として、侵入深さ一定法を提案した.この手法をショットピーニングした鉄鋼材料に適用して、表面下100μm領域に存在する残留応力測定に成功した. (2)さらに,表面下の残留応力分布を、sin2ψ線図の非線形性から非破壊的に求める方法を検討した.表面での通常のX線法での測定値も使用して、測定応力と侵入深さの関係を求め,それを3次曲線近似して応力分布を評価したが,それは通常のX線法で逐次研磨する手法と一致していた. (3)ニッケル合金上に厚さ0.2mmのNiCoCrAlYをボンドコートして,さらに8wt%Y_2O_3-ZrO2を膜厚約0.24mmコーティングして作成した遮熱コーティングに対して,ボンドコート層の応力を、トップコート層を通して放射光の用いて測定する手法を開発した.放射光からのエネルギ72keVのX線の高い透過能を利用し,Ni_3Alの220回折で応力測定をした.さらに、高温糟を試料台に組み込むことから1400℃までの高温でのその場測定を可能にした. (4)ひずみスキャンニング法による材料内部のひずみの非破壊測定のための光学系の検討を行った.X線の光学系としてダブルスリット系,ソーラースリット系,アナライザの3種類を使用して,測定精度の比較を行った.ひずみスキャンニング法においてLiFおよびGeのアナライザは表面の効果をとるのに有効であった.特に前者の200回折は有力である.無ひずみ状態での格子面間doの測定には、通常X線による測定が利用できる.ゲージ体積が材料中に入り回折強度が低下するときには充分なカウント数を確保する必要がある.また,高エネルギでは,LiFのアナライザは透過しやすいので,アナライザを正確に位置決めする方法の工夫が必要である. (5)放射光による応力評価の手法について文献調査を含めて総合的な検討を行うとともに,現在での問題点および将来の可能性について総説した.また、従来のX線手法と放射光高エネルギX線手法を組み合わせることから、遮熱コーティングに対して、はく離応力の測定法を提案した.
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