研究概要 |
ニオブ酸リチウムなどの圧電基板上に励振される弾性表面波を用いて,液体の霧化や搬送が可能であることが従来から知られている.従来,弾性表面波を用いて液体を霧化・搬送するデバイスとしては進行波を用いたものが知られていたが,研究代表者らは,定在波振動を利用することで,より小型で高効率なデバイスが試作可能であろうと考え,定在波を用いた液体の霧化・搬送に関する基礎的な研究を行った.ニオブ酸リチウム基板上に,反射器電極付きのくし形電極(IDT)を設けて定在波を発生させ,その電極直上に液体を滴下する,あるいは電極基板全体を液中に浸すことにより,液体の霧化・搬送実験を行った.液体の霧化に関しては,電極直上に液滴を滴下することで,液体の種類によらず,従来よりも低い駆動電圧で液体の霧化が可能であることが明らかとなった.一方,液体の搬送に関しては,液体の導電性によって全く異なる結果が得られた.絶縁性液体の代表例としてフロリナートを用い,その液中に基板を浸して電圧を印加したところ,基板に鉛直な方向へと激しい液体噴出が確認された.この現象を利用することで,液流を用いたマイクロモータの実現が可能であると期待できる.一方,導電性を有する液体に関しては,同様に液中に基板を浸して駆動を行ったところ,基板上方斜め方向に向けての液流が確認できた.液流の方向から判断すると,基板上の振動の進行波成分が高くなっていると考えられることから,今後,進行波成分を低減するための電極構造の改善が必要であると思われる.また,この種の液体に関しては,電極表面を絶縁膜でコーティングすることで,より優れた液体搬送特性が得られることがわかった.絶縁膜コーティングをすることで,水道水も含めた様々な液体の駆動が可能であることが確認できたため,今後小型化を進めることにより,マイクロ液体ポンプとしての応用が可能になると期待できる.
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