内径1mm程度のガラス細管の一部に高分子ゲルを封入し、この細管に蒸留水を流す時、ゲル内部の水はゲルの編目の摩擦を受けつつゲル中を移動する。このときゲルの温度によって摩擦係数が変化し、流量が変化する現象を確認し、その特性について調べた。このような現象はマイクロマシン内部の流れにおいて、流量制御弁や可動部のない弁として利用できると考えられる。 本研究ではアクリルアミドゲルとN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ゲルを光重合剤を用いてガラス細管中に合成した.このゲルは感温性であり、特定の状況では数度の温度差によって流体抵抗が大きく変わることが報告されている。この細管に蒸留水を流したときの細管前後の圧力と流量の関係を、恒温槽によりゲル温度を変化させながら測定した。流量は重量計測または細管のニスカス移動量を顕微鏡で観察して計測した。また顕微鏡によりトレーサー粒子を可視化しての流量計測も試みた。 その結果、温度が体積相転移点に近づくと摩擦損失係数が大きく変化することが確認された。細管壁画にゲルは接着されているため、体積がある程度拘束された状態での相転移については不明な点も多々残っており、ゲルの軸方向長さによって流動挙動が変化する場合が見られた。流量変化は最大で100倍近い試料もあったが、平均的には数倍程度の変化であった。弁としての利用には、さらに形状および材質の検討が必要である。また摩擦損失の指標になる物理量を検討した結果、ゲル内部の網目の等価直径を用いるのが妥当であるとした。
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