研究概要 |
希薄気体流やマイクロ・ナノデバイスまわりの高クヌッセン数流れの解析には,分子レベルの計測法が要求される.分子の発光およびその消光作用を利用した感圧塗料(PSP)や感温塗料(TSP)による手法は高クヌッセン数流れの計測へ適用できる可能性を持つ. 本年度は,低圧力域における圧力測定への適用が可能なPSPによる圧力測定技術の確立のため,これまで特性が明らかにされていない1Torr(133Pa)以下の圧力域におけるPSPの圧力感度などの基礎特性調査を行うことで,低圧力域における圧力計測に最適な感圧塗料を選定した.その結果,酸素透過性の高いポリマーであるpoly(TMSP)と酸素分子による消光作用の高いPd系ポルフィリンを組み合わせたPSPが1Torr以下の低圧力域における計測に最適であることを明らかにした. 第二に,PSPの発光強度およびスペクトルのNO圧力依存性や,NOよる感圧色素の劣化の影響など種々の問題点を調査し,NOを対象とした圧力計測に最適なPSPの選定および開発を行った.その結果Pd系ポルフィリンの一種である、PdTFPPとpoly(TMSP)を組み合わせたPSPがNOの圧力に対し非常に高い感度を持つことが明らかとなった.このPSPを用いることで,気体流計測に広く使われている分光学的計測法であるNO-LIFによる気体流の可視化技術とPSPによる固体表面圧力計測を複合させ,固体表面と相互作用する気体流の特性を総括的に調査することが可能であることを示した. さらに,本手法の適用例として,単段式完全再使用型宇宙往還機への搭載が有望視されているリニア型エアロスパイクノズルより噴出する高速流によるノズル壁面の圧力および温度計測をPSP/TSPの手法により行い,エアロスパイクノズルの性能を評価することで,現在も開発途上であるエアロスパイクノズルの最適な設計について明らかにした.
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