研究概要 |
本年度は周波数変調分光法の装置を完成させ、化学種計測の基礎検討を行った。 近赤外領域、ドップラー幅等の拡がりを持った線スペクトルの高感度時間分解検出を条件とし、最適な方式として二重変調法(TTFMS)を採用した。光源には1.4μm帯の単一モード可変波長ダイオードレーザを用い、共鳴型600MHzのEOM結晶変調器を通して周波数変調した。その変調強度を2.6MHzの信号発生器で与えることで二重変調を実現した。吸光セルを通したレーザ光を高速フォトレシーバーで検知、副変調波のビート信号、すなわち5.2MHzの成分として得られる信号を検波回路で取り出し、デジタルオシロスコープで記録した。まず蛍光法では見えないHO_2ラジカルの検出を試みた。HO_2の発生は355nmのパルスNd:YAGレーザ3倍高調波による塩素の光分解と、Cl+CH_3OH→HCl+CH_2OH,CH_2OH+O_2→HO_2+HCHOの反応系を用いた。7020cm^<-1>付近に数十本の吸収線が見出され、発光分光の報告と完全に一致したことで、疑いなくHO_2と同定できた。重水素置換したDO_2も分離選択検出できた。減圧下の検出感度は10^<12>molecule/cm^3程度上高感度を達成した。さらに反応条件を変えながらスペクトル探索を行った結果、H_2O、H_2O_2、OHラジカルが単一のレーザ波長走査範囲(1.40-1.44μm)で観測された。特にOHがこの波長帯で反応解析に足る感度と時間分解能で検出されたことは、これまでに例がないと思われる。 スペクトル形状と信号強度の圧力依存を調べた結果、圧力拡がりにより吸収線幅が変調周波数を上回る条件では、線幅の約二乗に反比例して感度が弱まることが判った。現行の変調方式で2GHz程度まで周波数を高めても常圧以上では充分な感度が得られないことになり、異なる変調方式の検討を要する。
|