まず熱電材料の極低温下での基礎特性を明らかにするために、市販されているBiTe系の熱電材料について、室温から20Kまでの、ゼーベック係数、電気伝導度、熱伝導率などの物性値を計測した。計測された物性値を用いて、熱電素子の起電力によって高温超伝導コイルに通電した場合の、電流値やコイルへの熱侵入量などを、一次元の数値解析によって求めた。解析結果によると、BiTe系の熱電素子を用いた場合、高い性能が得られるのは、つまり超伝導コイルへの熱侵入量が少なく、しかも大きな電流値が得られるのは、熱電素子の平均温度が70Kから100K程度の範囲であることが示された。また数値解析では、熱電素子の長さや断面積などの最適な形状に関する考察も行った。 液状に関する解析結果に基づいて、市販されている熱電素子を積み重ねたり並列に組み合わせたりして、π型接続と片極接続の2種類の素子を作製した。片極接続とは、π型接続の片方の熱電素子の代わりに高温超伝導線を取り付けたもので、高温超伝導線は熱電素子の高温端とコイルを直接むすぶ。これら2種類の素子を用いて通電実験を行った。 実験結果より、片極接続の方がπ型接続に比べ高い性能が得られることが明らかになった。これは、π型接続の片方の熱電素子の代わりに高温超伝導線を取り付けたために、おもにコイルへの熱侵入量が低減したことによる。ただし、片極接続の場合は、高温端の温度を高温超伝導線の転移温度より低くしなければならないことや、高温超伝導線を長くするなどしてそこからの熱侵入量を抑える工夫が必要なことが明らかになった。さらに大きな通電電流を望む場合には、高温超電導コイルおよび電流リードの電気抵抗が無視できず、それらの影響を考慮して熱電素子の形状を決めることが重要であることが示唆された。
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