研究概要 |
工業装置の実環境下にある表面は,実験室の清浄な光学鉄面とは異なり,ミクロにあらくなんらかの被膜に覆われている.また,表面加工プロセスでは,積極的に表面にミクロ形状を実現し被膜を成長させる.すなわち,表面性状は,実環境下であるいはプロセス下で時々刻々にも変化する.本研究は,分光学的なハード・ソフト手法によって,このような表面の熱ふく射特性を伝熱評価のために明らかにし,また,熱ふく射を用いる表面のミクロ性状診断法を開発することをめざすものである:平成15年度には,以前から研究代表者らが開発してきた広波長域高速ふく射スペクトル測定装置を基礎として,時々刻々に測定される表面の放射と反射のスペクトルを解析して,時々刻々の表面の温度・あらさ・被膜厚さを診断する方法のアルゴリズムを提案し,検証実験を行ってその性能を例証した.そのアルゴリズムの温度診断部は,表面状態の変化にともなう放射率の変動の知見なしに温度を推定する強力なものである.そのミクロ性状診断部は,鏡面反射に注目するとふく射の散乱反射性表面におけるrmsあらさが自己相関長さとは独立に推定できるというアイディアに基づくものである.この方法は,表面の温度・ミクロ性状の非接触インプロセス診断の強力な手法となりうる.さらに,その実験では,表面に被膜をもつ金属表面(薄膜系)が反射波のみならず放射波にも明瞭な干渉の挙動を示すことに注目した.この発見は,熱ふく射をより有効なエネルギーとして利用する技術に繋がりうる.そこで,この薄膜系と,さらに,反射ふく射に強い干渉を起こす周期的なミクロ構造をもつ回折格子状の表面(格子系)をも対象として,実験とモデル計算を行って,それらにより放射される熱ふく射球面波の干渉挙動を検討した.
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