ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズル内の燃料挙動を中性子ラジオグラフィによって可視化する装置を試作し、韓国原子力研究所の研究炉HANAROのIRポートで実験を行った。ノズル及び燃料噴射ポンプは実機の部品を軽油は市販されているものを用い、実機と同程度の200MPaの圧力で噴霧し可視化を行った。モーターで燃料ポンプのカムとチョッパーを同軸で回転させ、チョッパーで可視化したいカム角の時間だけノズルに中性子を照射し、透過した中性子はコンバータで可視光に変換され、鏡を介して冷却型CCDカメラで多重露光して積分画像が得られる。撮像時刻はカムとチョッパーのスリットの角度で設定でき、カム角を少しずつ変えることによって噴射中の時系列の画像を得た。スリット角を3.6度とし、1.67msから1msのシャッタースピードで露光でした。画像のノイズを低減するため、同一条件で20秒の画像を7枚取り、非線形フィルター処理を行ってから積分し、合計140秒の撮像によって良好な画像を得た。ポンプの回転数を360rpmから600rpmまで変化させ、また燃料噴射量は最大と最小について実験を行った。ノズルホールでは、いずれの条件でもキャビテーションが生じていると思われる画像が得られた。また燃料噴射量が最大の条件では燃料噴射に遅れが生じ、その条件における時系列画像を撮影した。この遅れはノズルのシート部におけるキャビテーションが原因と推定され、アーベル変換を行うことによりシート部の燃料挙動を可視化した。遅れてカムが上昇しているにもかかわらず燃料噴射が遅れ、噴射しない状態ではシート部には燃料は観察されず、キャビテーションが生じていることが推定された。以上により、従来から推定の域を出なかった燃料噴射ノズル内のキャビテーション現象に対して、ノズルホールでキャビテーションが生じていること、シート部でキャビテーションが生じると燃料噴射に遅れが生じることを、実機を用いて実証した。
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