研究概要 |
小惑星の表面は1万分の1G以下の微小重力環境であり,探査機が安定して着陸することができない.よって,地上でイメージされるような,車輪型,歩行型の移動ロボットは宙に舞い上がってしまって成立しない.わが国初の小惑星探査機MUSES-Cでは,表面に数秒間タッチダウンする間にサンプルを回収する方式が開発されたが,岩陰や窪みのような小惑星の表面をくまなく探査するためには,自在に移動できる装置が必要である.本研究では,小惑星表面を構成するBoulderと呼ばれる岩塊に,ロッククライミングのようにしがみつきながら匍匐前進する探査ロボットを着想し,その可能性を追求する. 平成15年度の研究では,今後の小惑星探査に求められるミッションシナリオおよび表面探査技術の洗い出しをおこなった.その結果,わが国の次期小惑星探査ミッションにおいては,小惑星表面の岩石およびレゴリス上を詳細に移動探査することのできる,表面サイエンスパッケージが強く求められていることを確認した.表面移動方式については,これまでホッピング移動が開発されているが,岩陰や窪みのような部分をくまなく探査するための移動技術は未開発である.微小重力環境値においてこれを実現するためには,岩石表面に張り付いて移動することが求められ,具体的には,脚型のロボットの足先に,微小な凹凸を巧みにつかむことができるマイクログリッパを取り付けることが有効である.グリッパの方式としては,静電気力や分子間力による付着よりも,機械的な爪による把持がもっとも確実であるとの結論に達した.そこで本年度は爪型のマイクログリッパの設計・試作を行った.グリッパの性能評価,および微小重力模擬実験によるロボット全体の性能評価が次年度の課題である.
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