研究概要 |
現在の計算機で数10億年もかかる因数分解が数分で解けてしまう可能性があるとの衝撃的なアナウンスメントから,量子計算が脚光を浴びている。その動作には制御ノット操作が必要であるが,制御光子1つが存在したときのみ,信号光子の位相が180度変化するような「量子位相ゲート」を構築できればこの動作が可能である。Turchetteらは大きさ56μmの微小共振器にCs原子を入れて,光子一つで他の光子の位相を16度変化させることに成功した。今後共振器構造の微小化と振動子強度の大きな材料の選択により電子-光子の結合強度を増大すれば,この量子位相変化を180度に近づけることも可能である。これまで研究代表者らは(001)GaAs基板上に成長したZnSピラミッドによって3次元微小光共振器の研究を進めてきた。 今回,ピラミッド内部に挿入した量子ドットと共振モードをより強く結合することを目指して,ピラミッド型3次元微小光共振器の時間領域差分法(FDTD)解析を進め,ピラミッド内部における共振モードの電磁界分布ならびに共振Q値の理論的検討とそのさらなる増大の検討,さらにピラミッド型3次元微小光共振器と外部平面波との結合に関する解析と光入出力に関する結合量子効率の増大など,共振器特性の理論的な解析を進めた。この解析からわかったこととして,3次元ピラミッド内部の共振モードは,簡単な光線近似では予想できないような複雑なモードも存在すること,横モード次数が大きいすなわちピラミッド底面への入射角度が大きいほど高い共振Q値を持つことがわかった。 またピラミッドでの量子ドットと共振モードの結合による位相変化を効率よく測るためには,ピラミッドに入射する光との結合効率を改善する必要がある。この目的のためにソリッドイマルジョンレンズによる結合効率の向上を検討した。
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