磁気ランダムアクセスメモリの高性能化のためには、強磁性トンネル接合(MTJ)において、高い磁気抵抗変化率を維持しつつ、接合抵抗を低減することが必要不可欠で、ピンホールなどの欠陥の少ない均一な組織を有する極めて薄い絶縁膜を再現性良く作製しなければならない。本研究では、被酸化物であるAlの仕事関数より大きなエネルギーを有する紫外光をウエハに照射することによりAl表面から発生する光電子をウエハに印加する負のバイアス電界を用いて電界加速し、Al薄膜近傍の酸素分子に衝突させることで、ラジカル・イオン等の酸化種をAl薄膜表面近傍にのみ均一に励起させ、再現性良く、均一かつ高品質な極薄絶縁層の作製を目指すものである。 平成15年度は、まず、酸素プラズマのプラズマ診断を行い、プラズマ酸化における酸化のメカニズム(酸化種の同定)について検討した。また、酸素雰囲気に紫外光を照射することにより酸化力の強いオゾンが発生することが知られていることから、予備実験としてオゾン酸化によるAlの酸化過程についても検討した。 1.酸素プラズマのプラズマ診断 酸素プラズマ中には多くの種類の酸素ラジカルが存在することがわかった。これらの酸化種の中で、O^1Dラジカルが酸化に大きく影響を及ぼしていることが、特性との相関から判った。 2.オゾンによるAlの酸化過程 オゾン酸化法で作製したMTJは、現在一般に使われているプラズマ酸化法で作製したMTJよりも、成膜直後において高い磁気抵抗変化率を有することがわかった。また、オゾン酸化プロセスにおける最適暴露量はプラズマ酸化の場合に比較して3桁程度大きい傾向を示したことから、今後要求される極薄Al膜の酸化においてオゾン酸化は制御性の観点から有用であると考えられる。このような特性の変化は、酸化種がオゾンの分解によって得られる原子状酸素であることから、酸化過程の変化に因るものと考えられる。
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