アインシュタインの光電効果は、ある金属の仕事関数以上のエネルギーを持った光を金属に照射すると光電子を放出するという現象である。この光電効果を用いて、近年ファインピッチ化の著しい基板配線の断線・短絡・導通を非接触で検査する非接触光探針法の開発の可能性を調査することを本研究の目的としている。このために本年度は、光電子放出を測定するための光電子電荷量測定システムの構築と光電効果の金属表面状態と真空度依存性の調査を以下のように実施した。 1)補助金にて購入したUVキセノンパルス光源と分光器、さらに、設計・製作した電荷検出回路と、電極導入端子と光学窓付き真空チャンバーを組み合わせて、UV単色光を真空中で基板試料に照射したときに放出される光電子の数、すなわち、光電荷量を測定する光電子電荷量測定システムを構築した。この場合、現有している計測用パソコンを用いて、単色化したUVパルス光と同期して電荷検出回路が動作して、パルス毎の放出電荷量の時間応答が測定できるシステムとした。 2)基板配線に用いられる金属は主に銅であり、ある場合においては金、ニッケル、あるいは半田合金等がメッキされている。これらの金属の仕事関数(銅:4.18eV、金:4.90eV、ニッケル:4.01eV)以上のUVパルス光を照射したときに金属から放出される光電子の測定を、前項で構築した光電子電荷量測定システムを用いて行った。その結果、光電効果で予測されるように仕事関数以上のUVパルス光で光電子放出が確認された。しかし、金属の表面状態と真空度に依存した。良く集光したUVパルス光の複数回の照射によって、金属表面が浄化され、期待される光電子放出が得られることが明らかになった。
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