研究概要 |
コンクリート構造物を非破壊でその内部の中性化についてモニタリングするための手法を,光ファイバーで内部のpH変化を検知するという概念で行うことを目的とし,本年度は実際に光ファイバーの一部を光軸がずれないように切断し,そこへ流し込んだ樹脂などの変色,あるいは透過光量の変化を利用する方法で検討した.この手法は樹脂あるいはFRPの化学劣化検知用として開発したものを応用しようとするものであり,コンクリート内のpHを検出するために,フェノールフタレイン添加ゲルを利用することにした.まず,PVA/四ホウ酸Naゲルを作製し,その際にフェノールフタレインを添加した. 本ゲルは,コンクリートの中性化していない面に接触させると十数分で赤色に変色すること,また,いったんアルカリ溶液に浸漬して赤色に変色させたものを,コンクリートの既に中性化した面に接触させると1時間程度を必要とするが無色に変わることを見出した. さらに,VE製のセンシングモジュール部(光軸がずれないように,耐化学薬品性に優れたVE樹脂によってファイバーを固定した後,約2mmのスリットを加工した)へこのゲルを詰め込みアルカリ水溶液(pH=12.6)へ浸漬し,光ファイバーヘ可視光を通して分光分析すると550nm付近に大きな吸収が認められ,赤紫色のフェノールフタレイン特布の発色が検知される.さらにこのアルカリ溶液と中性水溶液(pH=8.6)を交互に浸漬した際には10回程度までの範囲では充分再現性があることを550nmにおける透過率測定によって得た. また,これをセメントモルタル中に埋め込んでも同様に550nmにおいて透過率の変化が見出された.ただし,長時間に及ぶと550nmにピークを持つ波長特性が減少し,全体の透過率が低下した,モルタルを割って検討するとゲルが乾燥しており,今後ゲルの安定性を検討していく必要がある.
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