研究概要 |
車両走行により生する橋梁振動は騒音や低周波音等の環境振動問題をもたらし,原因の究明,環境基準の設定,環境振動の対策が住民から強く求められる等,社会的問題として取り上げられるようになって久しい.本研究では,この問題をシステムの振動伝達問題として捉え,それぞれに伝達関数で表した理論的モデルの適用によって定量的に予測する手法を確立することを目的とする.平成15年度の研究実績は以下のとおりである. 1)低周波音の知覚閾値に及ぼす高周波雑音の影響について,解析ならびに実験により検討を加えた.解析では,既存のラウドネスモデルを外耳・中耳・内耳での伝達関数の変更などにより低周波音域に拡張・修正し,これによって雑音下低周波音の知覚閾値を解析的に求めた.一方,実験では,高周波雑音のレベルを変えて低周波音に対する音響心理実験を行い,解析結果との定量的な比較を行った.この結果,高周波雑音の存在によって低周波音の知覚閾値が変化すること(マスキング)が確認され,修正ラウドネスモデルはこの変化を定量的に予測し得ることが明らかとなった. 2)低周波領域の純音と2つの純音を組み合わせた複合音に対して,知覚閾値およびアノイアンスの測定を行った.純音は31.5Hz,50Hz,80Hzの周波数を有し,各周波数ごとに4つの音圧レベルの試験音を被験者16名に暴露している.63Hzの純音を参照音として,試験音と等しいアノイアンスである音圧レベルに調整することによりアノイアンスを測定した.複合音は純音のすべての試験音に40Hzの同一の音圧レベルを加え,それを被験者に暴露することによりアノイアンスを測定している.その結果,純音では,低い周波数になるほど音圧レベルが上がるとアノイアンスの増加率が高くなり,複合音では,そのアノイアンスは2つの純音の相対的な音圧レベル差に依存することが明らかとなった.
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