研究概要 |
本研究は,車両走行により生ずる橋梁振動がもたらす騒音や低周波音の環境振動問題を,システムの振動伝達問題として捉え,それぞれに伝達関数で表した理論的モデルの適用によって定量的に予測する手法を確立することを目的とする.平成16年度の研究実績は以下のとおりである. 1)複合低周波音から人間への伝達過程を解明するために,低周波領域の不可聴音(25Hz,-5dB,-10dB)が低周波純音(31.5Hz,40Hz,50Hz)の知覚閾値に及ぼす影響に着目し,音響心理実験を行った.その結果,周波数が近く音圧レベルも比較的高い不可聴音の存在によって,近接する低周波純音の知覚閾値が低下することが明らかとなった. 2)道路橋エキスパンション・ジョイント部における振動から騒音への伝達過程を解明するため,モジュラー型ジョイントの実物試験体を用いた打撃試験および実車走行試験を行って振動騒音特性を把握すると共に,有限要素法に基づく固有振動解析を行ってジョイントの振動特性を明確にした.その結果,車両走行時騒音の原因となる周波数が特定され,その中で構造の固有振動数と対応するものの存在が確認された. 3)数多くの周波数成分を含む振動騒音問題を統計平均的に扱うために,統計エネルギー解析,SEA (Statistical Energy Analysis)の適用性について検討した.具体的には,2)での打撃試験時に騒音測定をも行い,SEA解析による騒音推定値との比較により考察を加えている.モデルパラメータの決定に難があることなど,SEA解析の適用可能性と問題点を示すことができた.
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