本研究は、自動車の運転者が、情報が不十分な分岐点で進むべき方向を推論するプロセスを明らかにすることを目的とする。このため、まず、運転者が予定経路の既知情報と走行中の情報を比較処理する構造、およびそれらを総合して進むべき方向を推論するプロセスをモデル化する。次に、推論の中心となる、分岐点での進路選択モデルにおけるパラメータを実験的に求めるため、実験シミュレータ用ソフトウェアを開発し、既知情報、案内情報に関する多くの条件下でシミュレータ実験を実施する。そして、実験データの分析結果を通して、案内情報が十分でない場合の分岐点での進路推論のプロセスを明らかにする。 このため、平成15年度に、運転者が予定経路の既知情報と走行中の情報を比較処理する構造、およびそれらを総合して進むべき方向を推論するプロセスについて、運転経験者へのインタビューと専門家の討議を通して検討し、次に、進路推論モデルにおける運転者行動を実験的に明らかにするため、次の機能を有する実験用シミュレータの開発と道路網データの作成を行った。 平成16年度は、シミュレータを用いた室内実験により、(1)認知距離の精度に関する実験、(2)認知距離に基づいた分岐点の同定確率に関する実験、(3)迷走時の進路選択行動に関する実験を行い、進路推論モデルのパラメータ推定を行った。また、案内標識とカーナビとがどのように使い分けられているかを実態調査した。 平成17年度は、前出のシミュレータを改良し、案内標識に用いられる情報として交差点名を導入した場合や、地図に交差点ごとの案内標識情報を載せた場合の効果を、シミュレータを用いて実験した。その結果として、新しい情報を用いた案内体系の効果を確認した。
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