研究概要 |
間伐材を充填した上向流式生物ろ床装置を用いて,下水2次処理水を想定した無機排水からの窒素りん除去能を実験的に検討した。その結果,杉角材を充填した装置が,あてチップや杉チップを充填した装置よりも窒素除去速度が速く,滞留時間12時間程度で60%の除去率を達成した。チップを用いた場合は,実滞留時間が短縮されることにより除去速度が低下したものと推定された。嫌気的なショックロードを与えた後に脱窒率の向上が認められたこと,硝酸塩を枯渇させると硫酸塩の減少が認められたことから,硫酸塩還元細菌が処理槽内で重要な役割を果たすことが推定された。装置内の生物膜の反応を回分実験により検討した結果,担体付着生物膜の他栄養生脱窒活性が高く,担体内部に硫酸塩還元細菌と硫黄脱窒細菌が共存していることが示された。担体内部に生育した硫酸塩還元細菌は,担体である木質の分解に関与していると考えられた。 次に,鉄くずと間伐材を充填した生物ろ床装置により,窒素とりんの同時除去について検討した。その結果,90%以上のりん除去率を達成できた。さらに間伐材のみを充填した場合よりも窒素除去速度の向上が認められたことから,硫酸塩還元細菌による鉄の腐食で生成された硫化物を硫黄脱窒細菌が利用していると推定された。以上のことから,本処理方式では,他栄養性脱窒細菌と硫酸塩還元細菌,硫黄脱窒細菌が共存した生物膜により,効率的な窒素とリンの除去が可能であることが示された。 今後,処理速度の向上のために,鉄くず内に杉チップを分散させる処理装置を考案し,その効果を検討するとともに,生物膜内の微生物群集解析と基質利用能を明らかにすることにより処理メカニズムを検討する予定である。
|