火災時の終局的な架構安定性には、火災初期の爆裂による断面欠損の程度と、終局的な崩壊モードとの関係を考える必要がある。そのうち、爆裂の発生機構については、材料内温度分布により生ずる熱応力と、空隙内水分上昇により生ずる応力の組み合わせで発生条件を記述できると考え、3次元有限要素法解析による検討を行った。既往の実験で用いられた半径50mm、高さ100mmの円筒形供試体をISO834に規定する標準加熱曲線に従って均等加熱した時の供試体内部温度、水蒸気圧力、含水率を求めた。その結果、内部での水分蒸発による空隙圧力上昇は、コンクリート強度が高いものほど顕著であり、普通コンクリートでは1MPa弱であるが、圧縮強度が100MPa程度の高強度コンクリートでは、内部の空隙圧力は4MPa(40気圧)程度まで上昇することが示された。また、加熱に伴う水分移動が生じるため、表層部近くで発生した水蒸気が空隙内部を移動して深部の低温域で再凝縮するため、空隙が液状水でほぼ飽和する状態が生じている。この傾向は、高強度コンクリートほど顕著に生じ、過熱された液状水が材料内の一部分に蓄えられたままコンクリート温度が上昇し、加圧水として長時間存在する。加圧水が材料空隙を押し広げる力は、爆裂の発生および拡大に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆される。空隙内の圧力上昇を考慮した熱応力解析を行って、爆裂メカニズムを特定する手がかりが得られた。爆裂後の耐力低下に伴う終局状態については、基本的な崩壊形の抽出のための文献調査を行った。
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