本研究の目的のひとつは、国内および海外の都市空間を対象として、空間の形態に着目し、高解像度衛星画像データから、その構造や配置パターンを解析する手法を考案することであり、空間の形態とは、道路や街区、緑地、水系、建物などの幾何学的情報を示すものである。また、実際に複数の都市空間に対して上記の手法を適用し、同一の評価軸による都市空間の相対化、レベル化を検討して、都市空間の分類を試みることも予定されている。 本年度は、はじめに東京都内の渋谷駅周辺の5km四方を対象として、高解像度衛星画像データ(解像度1m、4バンドカラー、水平誤差±1.75mのデジタルオルソ・エキスパート画像)をサンプルとして使用し、画像特性の分析を行った。その結果、高解像度衛星画像データから巨大な緑地や水系などは比較的抽出しやすいが、それ以外の情報の抽出は困難であり、従って、空間形態の認識プログラム、空間パターンの解析プログラムの作成するための予備的研究として、地形図などの正確な幾何学的情報を利用して、空間のスケールと空間構成要素の形態(大きさと形)との関係について把握することが必要であると認識した。これに基づき、東京23区内という広域を対象として、既存の地理情報システムデータ(GISデータ)を使用し、空間構成要素のカテゴリーごとに、規模、形、配置に関する分析を行った。空間構成要素のカテゴリーとしては、公園、農地、駐車場、未利用地、園地などが挙げられ、それぞれの規模分布や空間的な分布状況を把握した。これらのデータは、高解像度衛星画像データについての空間形態の認識プログラム、および空間パターンの解析プログラムを作成する上で基礎的データとして取り扱われる。
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