関東大震災火災、函館大火など、過去には市街地大火によって多くの犠牲者が発生した事例が少なくない。現在では通常時の市街地大火は稀になっているが、依然として木造家屋を主体として構成されている我国の都市では、消防機能が損なわれる大地震時には同時多発的な火災が市街地大火として拡大する危険性はなお解消されてはいない。このような火災によって、現代の市街地で、人的・物的にどのような程度の危険が発生し、どう対処すれば有効かを知るためには、多くの事を過去の経験から教訓として学ばねばならない。しかし、過去の災害に関する記録は概して断片的であり、全体像を把握するには限界があるので、過去の記録に併せてシミュレーションやCAD等、現代の技術を活用して、過去の災害の実態を再現することが有効である。 本年度は、過去の大火による災害状況の再現手法を構築するための基礎的検討として、市街地火災における延焼動態図など被災調査データが比較的整備されている酒田市大火を取り上げ、延焼動態や風速・風向データ等から火災気流による市街地上の危険性(温度上昇)を評価するモデル、その危険環境の下での市街地住民の避難モデルを作成し、当時の避難が概ねどのように行われたかを推定する手法を検討した。また、過去の地震火災の様相をリアルに再現する手法検討のために、1847年の信濃地震(善光寺地震)の際に、善光寺の近郊の宿場町、稲荷山宿で発生した4つの火災の延焼状況について、松林家文書など、現在残されている当時の数少ない資料から推定し、CADを用いて視覚的に再現した。
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