1.持家市場の過去20年間における変動状況に関して、住宅統計調査、住宅着工統計調査、住宅需要実態調査、住宅金融公庫利用者実態調査、家計調査、貯蓄動向調査、のすべてを活用してデータを整備し、分析を行った。この結果、住宅価格の変動と持家供給量が相関し、ポスト・バブル期では経済不況が続くにもかかわらず、住宅価格の低下によって供給量が伸びていること、キャピタルロスの増加によって、持家の買い換え市場が停滞していること、これまでに見られなかった現象として、持家から借家に住み替える世帯が増加していること、近年における住宅取得は、標準世帯だけではなく、カップル、単身、高齢者世帯など、新しい需要層が支えている部分が大きいこと、1990年代以降の持家世帯の家計状況が悪化し、ローン返済負担率上昇・債務超過・ローン返済滞納増加等の問題が生じていること、などを明らかにした。 2.不動産経済研究はかの民間機関が発行している住宅経済関係のデータを系統的に収集し、大都市における持家市場の変動について分析を行った。その結果、一戸建よりもマンション、新築住宅よりも中古住宅において住宅価格の低下傾向が著しいこと、バブル期に建設された中古マンションのキャピタルロスが平均2000万円に及ぶこと、ポスト・バブルの住宅供給が都心部において増加することによって、郊外部のマンションのキャピタルロスがいっそう拡大する傾向にあること、したがって都心部と郊外部の状況は連動していること、ポスト・バブル期における住宅供給の促進は都市の社会的・空間的なフラグメンテーションをもたらしていること、を明らかにした。
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