平成16年度の主な研究実績・成果は次の通りである。 自然素材使用を追求する自然素材型、自らの住まいづくりを追求する手作り・DIY型、直営工事型、既存住宅の修復再生型、古材リユース・リサイクル型、コーポラティブ・コーハウジング型、街並み配慮型などの諸類型と範疇の整理並びに各類型の住まいづくりシステムとしての記述・予備的定義をもとに、各類型の事例調査を進めている。 各類型ともに、住まい手の住まいに対するしっかりとした自らの考えと積極的な取り組みを前提として成り立つという共通点を有している。しかし、各類型ともに、住宅を購入するというような、ファーストハウスではないものの、必ずしも住まい手のライフスタイルが「スローライフ」であるとは限らない。住まい手の時間のかかる参加あるいは住宅取得・完成までの時間がかかる事を補って、余りある何らかの獲得目標を実現出来ることが基本条件であることを、明らかにしつつある。 地元の木を使って住宅をつくる取り組みにおいては、住まい手の環境問題に対する認識とそのグリーンコンシューマーとしての振る舞いと同時に、自分の住まいに使われる立木と森林を見かつ触れて、自然環境と自分の住まいの関係性を実感することが、伐採・乾燥・製材・加工・建設の長いリードタイムを我慢することを可能にしている。地域循環型住宅システムの再構築のためには、こうした条件を住宅生産システムに明示的に組み込まれる必要がある。修復再生型住宅においては、ストック活用の持つ意味と同時に、住宅の生きられてきた歴史・経緯、場合によっては家族の歴史が継承され、住宅地の景観熟成が可能であることでもって既存住宅の調査・実測・修復再生プラン作成の手間と時間を補償することが必要である。街並み形成を個別住宅システムに組み込むためには、街並み形成による住宅地の美しい成熟という時間のかかる価値認識手段が明示される必要があり、本研究における専門家による街並み形成実験でも、その困難性が明らかになっている。今後、さらに分析を進め、「スローライフ型」住まいづくりの分析をすすめ、その可能性を検討する必要がある。
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