研究課題
材料において諸々の物性や機能・現象が発現し観察されるスケールをミクロ、メソ、マクロと分類すると、離散格子モデルはミクロなレベルでの原子配列の詳細な知見を与え、連続体モデルはメソスケールでの組織を予測する。前者に属するものとして第一原理クラスター変分法が、後者ではフェーズフィールド法が代表的な手法として知られている。しかし、フェーズフィールド法は基本的に現象論的な手法であり、方程式中の係数項には経験値やパラメターを導入する為に任意性が伴なうこと、第一原理計算は基本的に均一な媒体を対象にしており、組織のような不均一系の計算に応用することは極めて困難であること、両手法の扱い得る時空スケールが異なること、等の問題点がある。本研究は、これらの困難を解決し、両手法の特長を活かして、組織形成過程に対する任意性のない計算を行うことを目的として遂行した。通常のフェーズフィールド法では、濃度のような保存量に対する拡散方程式と、規則度のような非保存量に対するTDGL方程式を、共通の自由エネルギー密度を用いて書き下し、両方程式を連立して解く。本研究のように規則-不規則変態を正確に取り扱う場合には、自由エネルギーを、濃度のみならず、長範囲や短範囲の規則度の関数として表現する必要がある。この為に、自由エネルギーにはクラスター変分法の自由エネルギー汎関数を用い、TDGL方程式との空間スケールの整合性をとる為に、空間粗視化の定式化を行った。そして、Fe-Pd系に対して全エネルギー計算を行い、クラスター展開法を介してクラスター有効相互作用エネルギーを算出し、これを、第一原理TDGL方程式に導入して、L10-disorderの相変態過程の第一原理計算を行った。特に、規則化に伴なう逆位相界面の生成過程に着目し、電子顕微鏡の観察結果と比較検討、その詳細を明らかにした。又、結晶方位や空間スケーリングを第一原理から一義的に決定することに成功し、時間スケーリングにも言及した。
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