研究概要 |
本研究の目的は強誘電体と強磁性体をナノスケールで組み合わせた積層薄膜を用いて【強誘電性と強磁性を直交】させることにより、強誘電性と強磁性の相互作用の可能性を検討することにある。これまでの強誘電性/強磁性の相互作用の研究は強誘電性と強磁性を併せ持つ物質に対して行われてきたが、本研究では強誘電層と強磁性層を分けることにより、強誘電体の分極軸の方向と強磁性体の磁化軸の方向を独立に制御できるようになる。平成15年度は初年度であるため、強誘電体と強磁性体の材料選択および強誘電体/強磁性体積層薄膜の作製を行う。薄膜の作製はRHEEDを搭載したPLD装置を用いて行った。本研究では、強誘電体の自発分極方向と強磁性体の自発磁化方向を直交させることを目指しているため、強磁性体の自発磁化方向を基板の面内方向とし、強誘電体の自発分極方向を基板に垂直な方向とした。強磁性体としては面内に磁化容易軸を持つニッケル亜鉛フェライト(Ni,Zn)Fe_2O_4(NZF)を選択した。強誘電体としてはc軸方向に分極軸を持つチタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O_3(PZT)を選択した。NZFの磁化容易軸とPZTの分極軸を直交させるためにはすべての薄膜をシリコン基板上に(001)配向でエピタキシャル成長させる必要があるが、単純に積層しただけではエピタキシャル成長しない。このため、種々のバッファー層の最適化が必要であった。最終的にPZT/(La,Sr)CoO_3/SrTiO_3/NZF/ZnCo_2O_4/(MgO-Al_2O_3)/CeO_2/YSZ/Siという積層構造にすることにより目的とするエピタキシャル成長をSi基板上に達成した。この積層構造体のP-Eヒステリシス測定を外部磁界のある場合と無い場合で測定をしたところ、リーク電流が大きい場合に外部磁界を印加すると分極が増加する傾向が示された。この原因については検討中である。
|