研究概要 |
本年度はNi-41Cr-7Al(at%)合金を用いて,500〜900℃で時効を施し,この合金の著しい時効硬化の原因を,結晶学,平衡論,速度論の観点から検討し以下の事を見出した. 強化相 約700℃/2h時効により硬さは150Hv〜700Hvまで著しく増加する.しかし,さらに高温側あるいは長時間時効を施すと,硬さは低下する.この硬さの著しい増加はγ'相の粒界反応型析出(不連続析出)に起因する.すなわち,粒界から粒内へ向かって大きさ約1μmのセルが生成し,セル内部は隔γ-Ni相とγ'-Ni_3Al相が約10nm間隔で交互に並んだ微細な層状組織となる.しかし,さらに時効するとセル内部の層状組織は崩壊し,α-Cr相(bcc)が生成する. TTP図 強化機構を解明するため,溶体化後の初期結晶粒径約300μmとしてTTP図を作成した結果,不連続析出するγ'相のノーズは約750℃100sにあり,また,α-Cr相の析出のノーズは約1000℃/1000sとなる.この組織変化が比較的短時間で生じる900℃においてγ'相の組成を調べた結果,析出初期には43%以上のCrを含むが,数百時間時効後には10%程度まで減少する.したがって,γ'相はCrを過飽和に含む非平衡相である.また,非平衡γ'相が析出するのは,bcc構造であるα-Cr相の析出が遅滞し,見掛け上γ+γ'2相領域が高Cr濃度側まで拡大するためである. 速度論 上記のTTP図に基づき,α-Cr相が析出しない種々の温度条件において時効に伴うセルの成長速度を測定し,セル形成の活性化エネルギを求めた結果172kJ/molとなる.この値はNi及びCr中のAlの体積拡散の活性化エネルギ280kJ/molの約半分であり,不連続析出によるセルの成長は先進界面における溶質元素の分配に起因した粒界拡散律速であると結論した.
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