研究概要 |
本年度は,Ni-(40-41)Cr-(6-7)Al(at%)合金の優れた強度の発現機構を明らかにすることを目的に,昨年度に見出した組織の形成機構に基づいて初期γ粒径(d)及びセルの体積率(V_f)を種々に変化させた試料を用いて引張試験を行い,強度の及ぼすセル状組織の影響について検討し,以下の事を見出した. (1)d=945μmの試験片を用いてV_fと強度との関係を調べた結果,引張強度(σ_<UTS>)はV_fが30%までは約500MPaである.しかし,セル状組織がすべての粒界を覆うV_f>30%以上になるとはσ_<UTS>はV_fに比例して増大し,V_f=100%で1700MPaとなる.この時,σ_<UTS>/V_fの値は一定となる. (2)溶体化材(V_f=0%)の降伏応力(σ_y)はdに強く依存し,Hall-Petchの関係(σ_y=σ_0+kd^<-0.5>)を満たす.その時の内部摩擦応力はσ_0=236MPa,応力集中係数はk=0.79MPa・m^<1/2>となる. (3)全面セル状組織(V_f=100%)とした試料のσ_yはdに依存せず,2.0GPaと著しく増加する.これは,時効によりセル状析出したγ/γ'ラメラ組織のセルサイズがdに依存せず約2μmと一定となるためであり,セル境界は粒界と同様,転位の障害物として働く. (4)Hall-Petchの関係にd=2μmを代入して求めた粒界強化分は約500MPaとなる.したがって,γ'相の板状析出による強化分は約1000MPaとなり,この値はラメラ間隔80nmとTayler因子を用いて計算した値と良く一致する.したがって,時効材の優れた強度はセルの形成による粒界強化及び板状γ'相の析出強化に起因し,後者の強度に及ぼす寄与は前者に比べほぼ2倍である.
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