研究概要 |
ラインコンパウンドは組成幅がほとんど無い化合物であるが、その中に、組成が古典的な化学量論に従わず構成元素比が整数でないものが多数存在する。このようなラインコンパウンドの基本的構造はほとんど既知であるが、実際には基本構造に多量の構造的原子空孔が組み込まれた空孔規則相として存在することが多い。このような空孔規則相には原子空孔の配列によって多くのvariationsが存在し、その物性は空孔規則相の構造と非常に強い相関を持っている。このような構造と物性の間に特に強い相関をもつ物質について、その相関を研究するためには「構造物性学」的視点を導入する必要がある。そこで、C11_bを基本とする構造をもつシリサイドについて、その構造、特に空孔規則構造と物性の関係について研究した。 Re disilicideの単相はReSi_<1.75>組成で得られ、基本構造はC11_b型である。しかし1770℃以下では、欠損Siが空格子点となり単斜晶空孔規則構造が形成される。Si欠損を構造的に捉えず、C11_b構造としてRe disilicideの電子構造を計算すればRe disilicideは金属的であると報告されている。しかし現実のReSi_<1.75>はnarrow gapの半導体であり、空孔規則構造と物性の強い相関がある。本研究では,ReSi_<1.75>のReをMoで置換、Si量を微調整しつつ単相試料を作製、その電気抵抗を測定し、半導体的挙動から金属的挙動への遷移と対応する構造変化を解析した。同時に新たなシアー構造やアダプティブ構造を見出し、それらの構造に結晶した試料の熱電性能指数を測定したが、現在のところ特に大きな値を得るには至っていない。
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