研究課題
本年度は組織情報の蓄積として、5083アルミニウム合金板の摩擦攪拌処理実験と950Mpa級鋼用溶接金属組織のEBSP解析実験を行った。結晶粒転写技術開発用の実験としては、モンテカルロ法による計算機シミュレーション実験を行った。以下にそれぞれの概要を説明する。摩擦攪拌処理を5083アルミニウム合金板(3mm厚)に対してビードオンプレート法により施し、板断面組織の詳細を光学顕微鏡法ならびにSEM-EBSP法にて解析した。攪拌条件は、回転速度を300〜2000rpm、送り速度を100〜500mm/min.の範囲で変化させた。攪拌部には微細結晶粒組織が形成され、最小結晶粒サイズとして1.7μmを達成した。この組織の特徴は高温で不安定であることにあり、773K以上の温度域で異常粒成長が発現することを確認した。すなわち、遺伝的組織情報として、ガン細胞のように周囲の組織を侵食して成長する結晶粒が材料内に埋め込まれたと考えることができる。溶接金属組織の解析では、予熱温度が高くなるにつれてフェライト粒の形状がラス状から塊状へと変化することが明らかになった。この組織状態は本材料特有の結晶粒形状として特徴的な変化を示しており、組織転写基礎情報として有用である。結晶粒組織変化過程のモンテカルロシミュレーション実験では、第2相粒による粒界移動のピン止め効果を再現することに成功し、さらに溶質元素の排出を伴うタイプの析出過程の計算では析出物のフロントにおいて溶質濃度の上昇が析出駆動力を下げることにより析出反応速度を減ずることを見出した。これらの計算結果は目的とする材料の上に粒界移動を抑制する元素をコーティングすることによる結晶粒組織の転写が可能であることを裏付けるものである。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
軽金属溶接 42・11
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