研究概要 |
微小な材料として、薄膜の腐食挙動を検討した。厚さ50mμ〜0.2mmのSUS304ステンレス製鋼板4種類を熱処理することによって組織制御し、サイズが微小になることにともなう腐食挙動の変化を検討した。1200K,86.4ksの溶体化焼鈍により結晶粒を成長させることによって、板厚方向に結晶粒がひとつしかない構造"Bamboo structure"を作ることができた。この材料を用いて、鋭敏化挙動に及ぼす応力の効果を検討した。 (1)鋭敏化挙動はバルク材と比べて速度が速いことを除き、粒界および粒内での炭化物析出形態は、同様であった。 (2)923K,973Kおよび1023Kでの鋭敏化で、鋭敏化度は時間とともに増大しピークを示した後、減少した。特に、ピークを示す時間は973Kおよび973Kでバルク材よりも急速であった。 (3)鋭敏化熱処理時に引っ張り応力を与えると、鋭敏化度は低下することが明らかとなった。 (4)鋭敏化熱処理時に引っ張り応力を与えた場合の応力軸に対する粒界の角度-傾角-と鋭敏化度との相関を検討した。傾角の増大かつ応力が大きくともなって炭化物析出の幅が大きくなることがわかった。これは、応力の負荷によって炭素の拡散が促進され、特に粒界で特に顕著なため大傾角での鋭敏化が特に促進されたことがわかった。 以上のように、薄い板材における腐食挙動を検討することによって、結晶粒界の性格と炭化物析出ならびにそれにともなう腐食挙動の変化について、検討することができた。
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