研究概要 |
本年度は,純アルミニウム,Al-Si合金,Al-Mg合金の板材を用いて,プリフォームの作製過程,発泡後のセル形態,機械的特性の比較を試みた.純アルミニウム合金は室温で容易に圧延接合(ARB)可能であったので,6サイクルまでのARB処理により,プリフォームを作製できた.しかしながら発泡特性に問題があり,40%の気孔率しか得られなかった.一方,Al-Si合金は,アルミニウムマトリックス中に硬いSi粒子が分散しているため,冷間圧延接合が困難であり,250℃まで加熱して圧延接合した.2枚の板から12サイクルまでARB処理を行うことにより,発泡剤の水素化チタン粒子が,分散する過程を観察できた.Al-Si合金板から最大60%の気孔率を有するクローズドセル型フォームを作製できた.この際,ARBのサイクル数が多いほど気孔率が増加し,ポアのサイズが小さくなることが確かめられた. Al-Mg合金板からもAl-Si合金と同様のARBプロセスにより,最大60%の気孔率を有するフォームを作製できた.しかしながらポアの分布はやや不均一であった.Al-Si合金フォームとAl-Mg合金フォームの力学的特性を圧縮試験により比較した結果,気孔率がほぼ等しいにもかかわらず,後者の方がずっと降伏強度が大きかった.これはマトリックス自体の強度の違いによるものであった. 以上の結果より,プリフォームの作製が容易な純アルミニウム,発泡特性に優れたAl-Si合金,機械的強度に優れたAl-Mg合金というように,素材自体の得意分野が明らかとなった.今後,目的とする特性を有するフォームを作製する場合,これらのバランスをしっかり踏まえて取り組む必要がある.
|