研究概要 |
本研究では,酸化物系電子(ホール)-イオン混合伝導体を対象として,ナノイオニクス効果による電子構造と表面電荷,表面の化学反応特性に及ぼすバンドベンディング効果を電子分光測定及び電気化学測定により明らかにすることを目的としている.本年度は,ナノイオニクス効果を分光測定により実験的に明らかにすることを中心とした測定を行った.対象とした物質群は,Sc(p-型)およびNb(n-型)をドープしたSrTiO_3,p型-O^<2->/H^+イオン混合導電体であるYbをドープしたBaCeO_3,n-型伝導領域を有するGd/Sm等の希土類をドープしたCeO_2等の酸化物系混合伝導体である.高エネルギー物理研究機構のシンクロトロン放射光施設に設置された光電子分光測定装置,軟X線吸収分光と同発光分析を行い,表面のフェルミ準位付近の電子構造を明らかにした.本年度は軟X線分光測定の発光と吸光測定の情報の脱出深さの相違を利用した表面電子構造の解析の可能性について検討を行い,充分な精度で両者の相違を観察できること,内殻準位のシフトを用いた化学シフト測定による表面準位測定法の可能性を見いだした.また,イオン-電子混合導電体表面へのin-situ金属および異種酸化物混合導電体蒸着法による表面準位(光電子分光)とバルク準位(軟X線発光)の相関を検討している.一方,ナノイオニクス効果による界面・表面化学反応特性については,NOxの不均質界面における反応特性について検討し,従来の固相法で調整したNd_<2-x>Ce_xCuO_4/Ce_<1-y>Nd_yO_<2-y/2>/Au上における反応特性を直流分極法により明らかにした.現在,膜厚を変化させた薄膜試料を電子ビーム蒸着法により準備中である.なお,同法による薄膜酸化物製膜のプロセス最適化を行い一部の成果を国際学会で発表した.また,石井(岡山大学・工)と共同して,イオンによる空間電荷の緩和モデルについて静的なエネルギー計算を行い,ヘテロ分散電極の電位分布解析を行った.
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