生体内で天然高分子が生成する過程は、重合と同時に起こる相分離過程を巧みに利用して合目的な構造形成を行っている。合成高分子系での重合反応誘起相分離は、そのような生体内での組織形成過程を模倣した手法であり、重合反応の結果もたらされる成分変化により系が非相容化して相分離を誘起するもめである。本相分離法は、重合反応と相分離がハイブリッドされた新規な相分離法と言える。本研究では、新規多孔膜の創製を目指し、超臨界CO_2を溶媒として用いた場合について、重合反応誘起相分離を利用した高分子多孔体の作製について検討を行った。 モノマーとして、アクリル酸、メチルメタクリレート、スチレンを用い、架橋剤にトリメチロルプロパンを、溶媒として超臨界CO_2を用いた。有機溶媒を用いない点で本手法は環境適合性の高い手法といえる。種々の濃度のモノマーを、重合開始剤(AIBN)存在下で超臨界CO_2に溶解させ、重合により相分離を誘起して構造を形成させた。モノマー濃度が低い場合(6vol%以下)には高分子ミクロスフェアーやウィスカーが、高い場合(10vol%以上)には多孔構造体が形成することがわかった。孔構造をSEMや窒素吸着実験により検討した結果、場合によっては孔径が12nm、比表面積が200m^2/gのシャープな孔構造を有する高分子多孔体が作製できることがわかった。また、モノマーと架橋剤のモル比をコントロールすることにより、孔径の制御が可能であることも明らかとなった。
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